Pythonをシェルスクリプトライクに使って他のコードを実行する

Qiitaに書けば良いと思うでしょ。僕もそう思う。

 

参考にさせていただいたサイト。

kyotogeopython.zawawahoge.com

 

subprocessモジュールを使う。osでも良さそうだが、非推奨っぽい?MacOS High Sierra, Pythonのversionは3.6.3。

import subprocess

 

for i in range(1000):

    subprocess.run(['python', 'anotherprogram.py', str(i) ])

 

runの第一引数にリストを渡して、区切ればよい。

bashのaliasでpy=pythonとしている自堕落な私だが、リストの一番目を'py'としても走らないことに注意。

anotherprogram.pyの引数として今はiを渡している。計算スクリプトをパラメータを変えながら何度も走らせたい場合等を想定している。シェルスクリプトで書いてももちろん大丈夫なのだけど。

 

『重力波物理の最前線』を読んだ

共立出版の基本法則から読み解く物理学最前線シリーズ。シリーズの中にはたくさんの現代的トピックを扱った書籍があるので是非他もチェックしてほしい。個人的に、このシリーズの書籍は著者によって難易度に少し違いはある。その中で本シリーズの「大学初年度で学ぶ物理の知識をもとに」理解できるという位置を良く体現しているのがこの『重力波物理の最前線』だと思う。学部生に読んでもらいたい。

 

2,3章で一般相対性理論と重力波の基礎事項が、4,5,6章で実際の測定装置や解析の手法が書かれている。サラッと(私個人から見ると)少し高級なことも書いてあるが、このトピックの第一歩としてとても好適であると思う。式も難しくないが、もしわからなくてもあまり気にせずに最後まで通読してみることをオススメする。

 

7章以降では今までのこの分野の研究の歴史が書かれている。特に7章の第一世代検出器の話は(門外漢の私にとって)知らなかった話もあり、そして重力波検出はならなかったものの得られたサイエンスについても書かれており、個人的に一番面白かった章である。〇〇を探して見つからなかった、という結果がとても大事だということはこの分野においてとても大事であるが、それを学部生時代に認識することはとても難しいので、それだけでもこの本を読む価値はあると思う。

 

もちろん万能の本はこの世に存在しない。厚さが限られている本であるから、全てのトピックを明解にかつ詳細に書くことは難しい。もし本を読んでわからないことがあっても、それは著者やあなた自身の理解力のせいではないと思う。幸い、参考文献等が巻末に充実しているので、そちらを参照したりして自発的に調べてみるのも学部生にとって良いかと思う。この分野は近年発展が著しいので、巻末に載っていない最新の文献でも面白いものがあるかもしれない。

 

また、重力波検出に用いられている低温技術やレーザー技術、免震技術等は他の物理実験で遍く用いられている技術である。そういった技術に興味を持って横道を逸れてみるのもこの本の良い使い方かもしれない。

 

このシリーズを5,6冊既に読んできたが、どの本も面白い。「惑星形成の物理」あたりを次は読んでみたいと思う。

#今月読みたい専門書技術書

ポストコロナ時代(語感がポストコロニアリズムっぽい)の大学院生を応援するため、#今月読みたい専門書技術書 を開催します。

状況が改善して好きに実験・ロードワーク等々ができるようになった際に研究成果が実を結ぶように、今家の中で集中して研究に役立ちそうな知識を学び、力を蓄える学生を応援します。

要は、「研究に役立ちそうな本を読んで1ヶ月以内にブログ等で内容等アウトプットしてくれた学生に本の代金最大4000円補助するよ」企画です。詳細は以下。

 

参加資格

大学院生・学部生対象。社会人学生含む。下記の決まりを守ることができる方。特にアウトプットの事項を守ってくれる人。ご専門の分野は問いません。

参加者募集期間

4/5-4/12 23:59:59 締め切りました。

実施期間

4/13-5/13

 

参加方法

参加したい旨、おまつりけばぶ @kebabfiestaのツイートに「読みたい専門書/技術書・読みたい理由を付けて」リプライください。

 

私ができる支援に限りがあるので、とりあえず5名を上限にします。

論文はいまのところ対象外です。「自分はこの1ヶ月で本を読むよりこの論文を読んだ方がいいな〜」と思う人はもちろんそちらを優先していただいた方が企画者としても幸せです。論文企画もまたやりたいと思いますので。

 

支援

基本的にAmazonギフト券の形で一人最大4000円まで支援します(Amazonギフト券の以外の形式でも可です)。超えたぶんは自費で払ってもらいますが、4000円を超える本を購入していただいても、もちろん良いです。本が4000円以下の場合は実費を支援としておきます。もしかしたら条件を改善するかもしれませんが、とりあえずこの形でお願いします。

 

アウトプット

5/13までにブログ・スライドシェア等の媒体で各章の内容のまとめ・感想・学んだこと・今後何に役立ちそうか+αを書いてください。よく書けている方にはささやかながら賞(品/金)を追加で贈呈いたします。詳細決まり次第ここに書きます。

けばぶのような、あなたの分野の門外漢である人にできるだけ伝わるように書いていただけると嬉しいです(もちろん、専門書のレベルによりけりなので、これは努力目標です)。

期日は5/13としていますが、「今年読んだ~」と異なり、これは応相談可です。学生の応援をしたいわけで邪魔をしたいわけではないので、多少の調整は応じます。

 

 

追記

 

参加してくださった方のアウトプットをここにシェアしておきます。

 

note.com

 

british-tea.com

 

海外出張時の持ち物リスト

パスポート

google map オフラインマップを作る(行ったことある土地でも。1年間で有効期限は切れる)

Googleマップで「オフラインマップ」を利用する方法〜ようやく日本対応

予備メガネ

ジップロック

買い物バッグ

バッテリー

Lightning to USB-A

USB microB to USB-A

ボールペン(機内)

e-ticket

現地通貨

コンセント変換(2つ以上)

折りたたみ傘

Nintendo Switch

バスタオル

歯ブラシセット

無印のこれ

敏感肌用オールインワン美容液ジェル 100g 通販 | 無印良品

メモ帳、ノート

テーブルタップ(長期滞在時)

ウェットティッシュ

 

結果発表 #今年読んだ一番好きな論文2019

というわけで、今年読んだ一番好きな論文の結果発表を行います!

 

まずは審査員賞から

 

タチコマ賞 (審査員:@antiplastics さん) お米

ヒストンアセチル化と転写開始はどちらが先か? by @kouchocolateさん

講評:序盤のクリスマスパーティの例えや、最後の教科書的な考えと比較した図など、他分野の人も理解しやすく説明していた。bioRxivの記事に対する他の研究者のコメントの紹介なども今時な感じがした。

株式会社tayoo賞その1 (審査員:@tayo_jp @kmoooooog さん ) アマゾンギフト券5000円分

【論文紹介】Improving Ad Click Prediction by Considering Non-displayed by @guglilacさん

講評:「生物系、理学系が多い」イベントで、めちゃくちゃインダストリ寄りの論文をストイックに紹介し、企画の多様性を引き上げてくれたことを評価しました。もっといろんな分野の人が書いてくれるといいと思います。

おまつりけばぶコメント:例年どうしても3-4件以外の投稿は生物分野の方になってしまいます。これは運営の毎年の課題なので来年頑張ります。

株式会社tayoo賞その2 (審査員:@tayo_jp @kmoooooog さん ) アマゾンギフト券5000円分 

常在細菌のDNAが病原細菌を殺す? by @63mrsk さん

講評:生物学者として、読んでて一番キュンときました。テーマ的に多分他分野の人には伝わりにくいけど、しみじみといい仕事ですごくいいです。

 

トカイワイン賞 (審査員:@vinumregum さん) アメリカの学生必携アイテム ハイドロフラスク

今蛍光生物が話題!蛍光する理由は?方法は?研究方法がすごかった!by @otama_jacksy さん

講評:変数が多すぎて因果関係が分かりづらい分野特有の謎ディスカッションに軽快にツッコミを入れていて、論文を読むセンスを感じました。手書きのイラストを含めて画像も多用しており、文章として読みやすかったのも良かったです。キラキラ生物゚+.(◕ฺ ω◕ฺ )゚+. 

リラックス賞 (審査員:@12ashk さん) 嗜好品(酒、珈琲、紅茶等)

一物理学者が観た哲学 Philosophy observed by a physicist by @JacquelineAmano さん

講評:馴染みが無い分野であるが、多くの科学者にとって興味を引く分野に関してわかりやすく解説をしていたので。

たかとー賞 (審査員:@takatoh1 さん) 3Dプリンター(3万円相当、機種応相談)

狩りバチの 卵からでる 毒ガスで カビを殺して 獲物を防腐 by@aeijmnoostさん

講評:非常に内容が明快で、文章量も適量でここまで論文について解説できているのは素晴らしい。

紙の本を読みなよ賞 (審査員:@shimasho さん) ジュンク堂・丸善で使えるギフトカード(honto.jpで電子書籍でもいいよ)5250円分

狩りバチの 卵からでる 毒ガスで カビを殺して 獲物を防腐 by@aeijmnoostさん

講評:一般向け(大学生が理解できるレベル)に落とし込みつつ軽快な文章で無駄のないロジックが素晴らしく、読後感がよい。純粋にテーマが面白く、生態学の疑問が生命科学の視点から解明されていくプロセスが興味深く書かれているのも高得点。

たまにはカフェでリフレッシュしま賞 (審査員: @localmin さん) カフェチケット全国版 https://anny.gift/products/171/ 

【論文紹介】あなたのリツイート理由,説明できますか? - 心理学の活かし方~研究などイロイロ~ by@MarathonUnivさん

講評:あなたのリツイート行動は?という、普段Twitterばっかりやっている人間にはかなりドキッとさせられる内容でした。書き方も読みやすく工夫されていて、専門外の自分でも十分理解できたのもgoodです。

今年も滋賀の魅力を押し付けていくで賞 (審査員: @nkjmu さん) 滋賀の名産品

リアル耐毒バフ by @mito_0120さん

講評:参考資料の豊富さ、簡潔に論文のエッセンスを紹介できていそうな点。さらに紹介者の書いているように、生態的なマクロスケールでの現象をゲノム編集という分子レベルの仕事(しかもかなり根気のいるいい意味で泥臭い仕事)を通して明らかにしたという論文の面白さ、それを選定してきた点。迷ってた他の2報も見ていたい。

おまつりけばぶ賞 (審査員: @kebabfiesta) アマゾンギフト2000円分

~亜高山帯雪田草原の埋没泥炭層と古気候との関係~ by@nougakuto_tetsuさん

講評:スライドデザイン、話の構成がとても良く、「見せ方」の点で大変勉強になりました。内容も審査員には馴染みのない分野であるものの、理解しやすくまた当該分野全体についてもっと知りたいと興味を持つようなプレゼンでした

 

 

そして一般投票の結果です。ベスト3の方には賞品が送られます。

第三位 アマゾンギフト券3000円分

狩りバチの 卵からでる 毒ガスで カビを殺して 獲物を防腐 by @aeijmnoost さん

第一位(同率) 同率なのでアマゾンギフト12000円分×2

一物理学者が観た哲学 Philosophy observed by a physicist by @JacquelineAmano さん

常在細菌のDNAが病原細菌を殺す? by @63mrsk さん

 

というわけで30票以上が集まりましたが大激戦の後、同率一位でお二方が最優秀です。二位分3000円と合わせてちょっと色をつけた分を折半ということでお二人にお送りします。どの記事もレベルが高く、三位@aejimnoostさんも1票差であったことを明記しておきます。

 

また、最優秀賞の支援として@yamartenさん、@SatoshiThermophさんにご支援いただきました。ありがとうございました。

 

今回も無事、今年読んだ論文を開催することができました。参加者の皆様、審査員の皆様に御礼申しあげます。今年も皆様にとって良い年になりますように。

 

やっぱり陽子の半径は小さい?

この記事は

この記事は「今年読んだ一番好きな論文2019大人版adevent calendar2019」の23日目の記事です。

adventar.org

 

学生版もあるので見ていってください。

adventar.org

 

今回取り上げる論文たち

今回取り上げる論文はこちらになります。

 

science.sciencemag.org

 

www.nature.com

 

Science,Natureにアクセス権がない方でもgoogle scholarからpdf版が入手できるかもしれません。

https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=A+measurement+of+the+atomic+hydrogen+Lamb+shift+and+the+proton+charge+radius&btnG=

 

https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&q=A+small+proton+charge+radius+from+an+electron–proton+scattering+experiment&btnG=

 

陽子の半径問題:発端 

世の中にある身の回りの物全ては小さなつぶつぶ、素粒子から出来ています。そんな素粒子の中でも陽子という身近な粒子に関するお話です。(例えば、「すいへーリーベ僕の船」と元素記号を挙げていく際の最初の水素原子は、陽子一個の周りに電子一個が束縛されています。通常の原子には必ず陽子が一個以上含まれています。)

素粒子物理屋さんの中には、これら素粒子の性質を正確に測定したいという人たちが一定数います。今回は陽子の半径(つまり大きさ)を正確に測定したいという人たちのお話です。

さて、これらの陽子の半径を測ってきたやり方は主に二つあります。一つは陽子に何かぶつけて跳ね返る様子を観測して大きさを測る方法。基本的には電子をぶつけるので、電子散乱と呼ばれています。二つ目は先ほどの水素原子のエネルギーを測る方法です(水素分光と呼びます)。水素原子の中の電子がとある状態(この状態のことを準位、と呼びます)から異なる状態に飛び移るときのエネルギー差を測定します。エネルギーは陽子の大きさに依存しているので、依存性を理論的に計算して、エネルギーの実験値から陽子の大きさを決定します。

両手法とも半径を求める精度はだいたい同じで、二つの手法合わせて10以上の実験がなされ、それらの実験の結果は概ねよく一致していました。米国の科学技術データ委員会(CODATA)は4年ごとに基礎物理定数の測定実験をまとめ、推奨値を発表していますが、2010年時点での推奨値は0.8775(51) fmというものでした(カッコ内数字は1標準偏差相当の不確かさを示しています)。

journals.aps.org

 

実は昔紹介したことがあるのですが、2010年にはこの状況が一変します。陽子の半径をより正確に測定できる第3の手法が開発され、この年実験結果が発表されました。この手法はちょっと不思議な原子を使った手法です。「ミューオニック水素」というこの原子は、水素原子によく似ていますが、陽子の周りにミューオンという聞きなれない素粒子が束縛されています。このミューオンは電子の仲間であり、電子と性質はほとんど同じですが、約200倍重いということ、100万分の2秒の寿命で崩壊してしまう、という2点が異なります。

この「200倍重い」というのが重要な点になります。普通の水素だとマイナスの電荷を持った電子がプラスの電荷を持った陽子に引き寄せられ、束縛して水素原子になった際に、ある一定の距離離れています。一方、同様にマイナスの電荷を持つミューオンが陽子と束縛した際には、重い分電子が捕まった際よりも陽子の近くにいる事になります。近くにいる、ということはエネルギーが陽子の半径に依存する度合いもより大きくなる事になります。そのため、エネルギーを測った時に陽子の半径により敏感な実験を行うことができます。

こういった観点からミューオニック水素のエネルギーを測ることは水素原子を用いる際に比べてより精度よく陽子の半径を決める手法だと前世紀には知られていましたが、レーザー技術の発展により、実験がなされ最初の結果が発表されたのは2010年になってからでした。

 

さて、彼らは実験の結果0.84184(67) fmという値を得ます。これはCODATAの値0.8775(51) fmよりも10倍近く精度が良いというだけでなく、当時のCODATA推奨値から4%近く陽子が小さい結果を示しています。3年後には同じ実験グループがより精度良く陽子の半径を測定し、これらの実験事実が論争を巻き起こします。

www.nature.com

 

この陽子半径の測定手法による結果の食い違いは「陽子半径問題」と呼ばれ、「今までの電子散乱・水素分光の両実験が間違えている」「ミューオニック水素の実験が間違えている」「陽子の半径を求める際に用いる理論計算が間違えている」「理論も実験もあっているが、ミューオニック水素だけに効く我々の未だ知らない粒子の効果によるものである」といった全ての可能性が探られ、いくつもの理論的・実験的研究がなされました。

 

昨年までのまとめ

「陽子の半径を求める際に用いる理論計算が間違えている」という点について、昨年までに多くの理論家による理論の再検証・計算が行われ、未だ決定的な間違いは見つかっていません。また、ミューオニック水素の実験については、他の研究グループによる実験は行われていません。(ただし、ミューオニック重水素と重水素の分光が比較され、同様の「半径問題」が見つかっています。)

 

水素の分光・電子散乱は複数の追試験及びデータの再解析が行われました。パリのグループは昔用いた実験装置を改良して水素分光を行い、2010年以前の水素分光結果に近い値を得ました。

journals.aps.org

また、ドイツマインツのMAMIグループは電子散乱実験を行い、これも以前の値を支持する結果を得ました。

journals.aps.org

しかしながら、ドイツマックスプランク研究所のグループが行った水素分光の結果はミューオニック水素の結果と無矛盾な結果を得ました。彼らは実験系に水素原子を導入する手法を工夫する事で今までの実験と異なった手法での実験を行いました。

science.sciencemag.org

 

追試さえも食い違う結果を出したことで、この議論はさらに注目を浴びます。更なるデータが必要とされ、特に従来の実験と異なる手法での検証が期待されてきました。特に、電子散乱では、電子が陽子にガツンとぶつかるのではなく、優しくぶつかった際のデータ(難しい言葉で言うと、運動量移行が小さいデータ)が必要であることが再認識されました。こういったアイデア自体は昔から存在していたが難しい実験を、実行に移す研究グループが出てきました。

 

今回の論文

さて、今回の論文についてです。今年も複数の結果が発表されましたが、Scienceの論文がカナダ・トロントのグループによる水素原子分光の結果、Natureの論文がアメリカのPRadというグループによる電子散乱実験の結果です。

トロントのグループは従来のほとんどの水素分光とは異なり、ある特定の状態と状態の間のエネルギー差(ラムシフトという)を測定しました。簡単のため割愛していましたが、他のエネルギー差を分光した際には陽子の半径を算出するために2つのエネルギー差を測定する必要があるのですが、このラムシフトの測定は単独で陽子の半径を決定可能です。また、彼らは従来よく用いられていたSeparated Oscillatory Field(SOF)法を改良したFrequency-Offset Separated Oscillatory Field(FOSOF)法という手法を用いてより精度の高い分光を行いました。

アメリカのPRadは先ほど述べた電子が陽子に優しくぶつかったデータを取得しました。もちろんこのデータを取るのも難しく、高度な開発が必要な検出器や陽子標的を用いて実験が行われました。

 

今年の結果を含めた陽子半径の測定結果のまとめを下に示します。丸が水素分光、四角が電子散乱の結果です。白抜きは過去の実験の平均を示しています(水素分光OLD H、電子散乱OLD e-p)。この二つの手法の結果を加味した2010年時点でのCODATAの推奨値が青帯で示されています。バツ印のミューオニック水素の結果を受けた追試が黒丸・黒四角で示されていますが、同じ測定手法でも実験によって結果が食い違っていることがわかります。

 

f:id:ekotto32:20191224111055p:plain

測定結果のまとめ図。測定の不確かさをバーあるいは帯の幅で表した。白丸は2010年以前の水素分光の実験(複数の実験結果を平均したもの)。白四角は2010年以前の電子散乱実験の結果(同様に平均値)。これらの結果から2010年に科学技術データ委員会(CODATA)が推奨した陽子半径の値がブルーの帯で示されている。これに対してバツ印二つはミューオニック水素の測定結果。青帯より有意に小さい結果を示している。これを受けて追試された水素分光・電子散乱法による陽子半径の測定結果をそれぞれ黒丸・黒四角にて示した。近年の実験結果を受けて修正された最新のCODATAの推奨値を赤帯で示した。図は本文中に示した文献から筆者作成。

 

従来より小さい半径を支持する実験がミューオニック水素だけでないことからCODATAは最新の推奨値を大きく変更して赤帯で示された値にしています。ただし、この問題は収束したわけではなく、今後も多角的な視点から検証実験が行われることが期待されます。

 

最新のCODATAの推奨値は下記から検索することができます。 

Fundamental Physical Constants from NIST

 

あとがきにかえて:測定バイアスとブラインディング

以上、簡単に陽子の半径問題について紹介しましたが、やはり人間の先入観というのは精密測定を行う際には慎重に取り扱わなければならないなと感じました。素粒子物理学ではこういったバイアスに強い解析手法を取るのは当たり前で、今月もarxivにとある新しい実験でどのようにバイアスを避けて解析・測定を行うのかという論文が出ていました。

arxiv.org

 

解析としてブラインド解析(blind analysis)を用いるケースも多々あり、重力波実験で偽の信号を定期的に注入する話も有名ですが、例えば某実験では実験グループ内に独立して解析するチームが複数存在します。その実験ではとある数値を求めるのですが、理論値に近づく・遠ざかるような心理的要因を取り除くため、解析チームごとに異なる有限のズレを人為的に加えてからデータが各チームに与えられます。数値の絶対値自体があまり意味を成さない状態(目隠し/ブラインドをした状態)で解析手法・手順を各チームが吟味し、全てのチームの合意が取れた時点でズレの値が公表される、といった具合です。実験結果に予期しない影響が加わることを極力排除することで、より信頼性の高い実験を行うことが大事だと今回の陽子の半径問題を通じて改めて認識しました。 

 

 

今年読んだ一番好きな論文2019 開催要項

今年読んだ一番好きな論文 アドベントカレンダー2019

 

 

実施要項

 

2019年に読んだ論文の中で、自分の中で一番インパクトのあった、面白かった論文をアドベントカレンダーに登録した日(12/1-12/25)に紹介してもらうプロジェクト

 

目的: 大学院生を勇気づけること

 

開催ページ

adventar.org

 

 

:決定次第随時更新していきます(賞を支援してくださる方を募集しています、特に優秀賞)

毎回、賞ができるだけ多くの人に行くように運営しています。(が、勿論重複して受賞される方もいます)

 

最優秀賞 (アンケートによる人気紹介記事の投票)(@yamartenさん、@SatoshiThermophさんにご支援いただきました!)

アマゾンギフト券2万円分

優秀賞(アンケート人気2,3位)

アマゾンギフト券3000円分

 

特別賞(審査員賞)(審査員による選出・賞品の選定が行われます)(随時追加予定)

 

タチコマ賞 (審査員:@antiplastics さん) お米

 

株式会社tayoo賞 (審査員:@tayo_jp @kmoooooog さん ) アマゾンギフト券1万円分

 

トカイ賞 (審査員:@vinumregum さん) アメリカの学生必携アイテム ハイドロフラスク

 

リラックス賞 (審査員:@12ashk さん) 嗜好品(酒、珈琲、紅茶等)

 

たかとー賞 (審査員:@takatoh1 さん) 3Dプリンター(3万円相当、機種応相談)

 

紙の本を読みなよ賞 (審査員:@shimasho さん) ジュンク堂・丸善で使えるギフトカード(honto.jpで電子書籍でもいいよ)5250円分

 

たまにはカフェでリフレッシュしま賞 (審査員: @localmin さん) カフェチケット全国版 https://anny.gift/products/171/ 

 

今年も滋賀の魅力を押し付けていくで賞 (審査員: @nkjmu さん) 滋賀の名産品

 

おまつりけばぶ賞 (審査員: @kebabfiesta) アマゾンギフト2000円分。(アマゾン使わない人は応相談)(参加者も審査員も分野が生物の人が例年多くなるので、それ以外の人から何となく独断と偏見で選びます。)

 

 

参加賞 賞をもらえなかった人にも、500円分のアマゾンギフト券(予定) 

 

賞を支援してくださる方、募集しています。@kebabfiesta まで。

 

  • 期間: 12/1-12/25 (期間内で1日1名の登録が可能、定員25名)
  • 募集人数:先着25名まで。
  • 終了日時: 12/26 0:00
  • 人気投票期間: 12/26-12/31 24:00
  • ランキング発表ならびに表彰: 1/3 (予定)
  • 期間中の情報ハッシュタグ #今年読んだ一番好きな論文2019

 

応募資格

 

  • 大学に在籍する学生の方々(年齢、性別、twitter上での生物種を問わない。学振DC、社会人学生も可)(学部生でも可としました)
  • Twitterアカウント(鍵付きはお控えいただければ幸いです)、連絡をとれるメールアドレス、論文紹介できるメディアを利用できること (例えば、各種blogやSlide shareなどのスライド共有環境、google docs、qiitaなど、各自紹介するメディアは自由に工夫してください)。

 

応募者ルール

 

  • 募集期間にアドベントカレンダーに紹介日を登録し、紹介の日にアドベントカレンダーと、紹介記事のリンクを公開してください。
    • Twitterアカウントで、アドベントカレンダーへログイン
    • 今年読んだ一番好きな論文2019のアドベントカレンダーのページへ
    • 紹介する日を選び、登録する
    • 登録日当日に、アドベントカレンダーへログインして、論文の紹介記事へのリンクとタイトルをコメント欄に記載して、公開
    • Twitterのハッシュタグを利用して、紹介記事へのリンクとタイトルを告知してください (#今年読んだ一番好きな論文2019
  • 紹介する論文は、2000-2019年に出版 (published date) されたものとさせていただきます。
  • 紹介する論文の分野(文学、工学、医療など)、種類(査読付きか否か、プレプリントなど)は問いません。
  • 既に日本語の他のメディアで紹介された記事で論文紹介することはお控えください (実験医学、ライフサイエンス新着レビューなど)
  • 論文から図表をblogへ引用する場合は、図表を改変するなどして著作権法に觝触しないようにしてください。また、これまでの傾向からも、図示による分かりやすい解説が人気をあつめますのでオススメいたします。
  • 受賞者は、発表後に@kebabfiestaからDMをさせていただきます。従いまして、@kebabfiestaをフォローしていただきますようお願いいたします。賞品の宛先について、自宅/研究室など選択できます。 

 

 

前回開催時の要項(参考)

http://festakebab.hatenadiary.com/entry/2018/11/12/120946

 

2018年のadventar(参考)

adventar.org

 

2017年のadventar(参考)

adventar.org