『重力波物理の最前線』を読んだ

共立出版の基本法則から読み解く物理学最前線シリーズ。シリーズの中にはたくさんの現代的トピックを扱った書籍があるので是非他もチェックしてほしい。個人的に、このシリーズの書籍は著者によって難易度に少し違いはある。その中で本シリーズの「大学初年度で学ぶ物理の知識をもとに」理解できるという位置を良く体現しているのがこの『重力波物理の最前線』だと思う。学部生に読んでもらいたい。

 

2,3章で一般相対性理論と重力波の基礎事項が、4,5,6章で実際の測定装置や解析の手法が書かれている。サラッと(私個人から見ると)少し高級なことも書いてあるが、このトピックの第一歩としてとても好適であると思う。式も難しくないが、もしわからなくてもあまり気にせずに最後まで通読してみることをオススメする。

 

7章以降では今までのこの分野の研究の歴史が書かれている。特に7章の第一世代検出器の話は(門外漢の私にとって)知らなかった話もあり、そして重力波検出はならなかったものの得られたサイエンスについても書かれており、個人的に一番面白かった章である。〇〇を探して見つからなかった、という結果がとても大事だということはこの分野においてとても大事であるが、それを学部生時代に認識することはとても難しいので、それだけでもこの本を読む価値はあると思う。

 

もちろん万能の本はこの世に存在しない。厚さが限られている本であるから、全てのトピックを明解にかつ詳細に書くことは難しい。もし本を読んでわからないことがあっても、それは著者やあなた自身の理解力のせいではないと思う。幸い、参考文献等が巻末に充実しているので、そちらを参照したりして自発的に調べてみるのも学部生にとって良いかと思う。この分野は近年発展が著しいので、巻末に載っていない最新の文献でも面白いものがあるかもしれない。

 

また、重力波検出に用いられている低温技術やレーザー技術、免震技術等は他の物理実験で遍く用いられている技術である。そういった技術に興味を持って横道を逸れてみるのもこの本の良い使い方かもしれない。

 

このシリーズを5,6冊既に読んできたが、どの本も面白い。「惑星形成の物理」あたりを次は読んでみたいと思う。